2020 年に日本呼吸器学会と日本リウマチ学会の協力により初版が作成されてから,早くも5年が経過した。この間,初版は世界初のCTD-ILD に関する診療指針として注目を集め,本邦での呼吸器科医や膠原病・リウマチ科医をはじめとする多職種の連携を推進し,その結果,本分野における多分野の取り組みを進展させ,患者診療の質向上に貢献してきたと自負している。
さて,初版以降,CTD-ILD に関する研究やエビデンスが著しく進展し,国際的にも関連するガイドラインやコンセンサスステートメントが種々発表され,診療の指針となる新たな情報が蓄積されている。本改訂第2版では,これらの最新の国際的知見に加え,本邦特有の保険事情や診療アプローチの進歩を反映させ,さらなる内容の充実が図られた。
今回の改訂においても,全項目が呼吸器科医と膠原病・リウマチ科医の協議のもとに作成され,両専門の視点を包含しつつ,放射線科医や病理医を含む多職種の視点を取り入れたことで,CTD-ILD 診療の多角的な方向性を示している。
このように作成された本診療指針が,CTD-ILD にかかわる医療従事者にとって有用な道標となり,本疾患で苦しむ多くの患者によりよい治療を提供する一助となることを心より願う。
(近藤 康博「序」より抜粋)
間質性肺疾患(ILD)は,いまだに膠原病における難治性病態として取り残されている。特発性肺線維症における抗線維化薬の進行抑制効果が示され,抗線維化薬の診療への導入が議論されるなかで,診断,重症度や進行の評価,治療管理などに関する関心が膠原病を含めたILD 全般に広がった。このようなタイミングの2020 年に,日本呼吸器学会と日本リウマチ学会が世界に先駆けて膠原病に伴うILD(CTD-ILD)の診断・治療指針を発刊した。以降,新たな治療薬の開発,臨床試験が多く実施中で,本邦では全身性硬化症(全身性強皮症)でILD におけるエビデンスを有する治療薬が次々に承認された。また,臨床に役立つ多くの研究成果が報告され,これら知見を取り入れたガイドラインが海外で次々に発出された。ただし,クリニカルクエスチョンとそれに対する推奨をフォーマットとしてエビデンスを重視するガイドラインでは,実診療に活用できる情報は限られる。そこで,本診療指針の改訂にあたっては,診療現場で役立つことを重視し,エビデンスを基本としつつも診療にかかわる呼吸器科医,膠原病科医などのエキスパート間の協議のうえでナラティブレビューの形式とした。一方,現状でCTD-ILD 患者の生命・機能予後の改善を示すエビデンスは乏しい。本診療指針の改訂を通じてリストアップされた課題を踏まえ,さらなる診療の向上が必要なことが改めて浮き彫りにされた。最後に,オールジャパンの体制で本診療指針の執筆,査読にかかわった多くの方々に感謝を申し上げたい。
(桑名 正隆「序」より抜粋)
序
日本呼吸器学会・日本リウマチ学会合同 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025 作成委員会
COI(利益相反)について
膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2025 改訂のポイント
略語一覧
第Ⅰ章 総論
A. Overview
B. 膠原病に伴う間質性肺疾患の捉え方
C. スクリーニング・リスク因子
D. 診療において重要な身体所見
E. 自己抗体検査
F. 画像
G. 病理
H. 評価(治療のタイミング,アウトカム)
I. 治療目標
第Ⅱ章 各論
A. 多発性筋炎/ 皮膚筋炎
B. 全身性硬化症(全身性強皮症)
C. 関節リウマチ
D. シェーグレン症候群
E. 混合性結合組織病,オーバーラップ症候群
F. 全身性エリテマトーデス
G. ANCA 関連血管炎
H. 自己免疫特徴を伴う間質性肺炎
I. 進行性肺線維症(進行性線維化を伴う間質性肺疾患)
第Ⅲ章 合併症
A. 肺高血圧症
B. 呼吸器感染症
C. 嚥下障害,誤嚥
D. 急性増悪
第Ⅳ章 治療薬
A. グルココルチコイド
B. 免疫抑制薬
C. 分子標的療法/免疫グロブリン静注療法
D. 抗線維化薬
第Ⅴ章 薬物療法以外
A. 血液浄化療法
B. 人工呼吸管理
C. 肺移植
D. 包括リハビリテーション